第756号

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日州医事 第726号
多病高齢化時代、医療現場の正確な電子カルテ記述で「ビッグデータ」を生かし、
医療ロジステックスを世に問う!!

日南市 きよひで内科クリニック 河野清秀

 本年の内科学会総会、開場で『多病高齢化時代には評価項目が多過ぎる。これらを診察記録に残すには電子カルテ、医療秘書は必須だ。』との話をした時のことだ。「ええ!高血圧の患者にも毎回聴診するのですか?」年配の先生が聞いた。「そうですよ!しないのですか?」私はびっくりした。血圧診療の基礎である心臓の聴診をしないで診療できるとは!?考えてみると、そこまで診察カルテ記述に時間をかけられないという事は解らないまでもない。私の診療所でも時間がかかると今も苦情がでる。時間短縮のため、私は、診察、口述のみで、電子カルテ入力は医療秘書、電子カルテ確認は看護師にまかせてきた経緯がある。
 しかし「診察やカルテ記述に時間が取れないから診察がおろそかになる」とは本末転倒ではないか。しかし、もしそれが蔓延しているとしたら、どうしたものか…。これは一大事である。医療の最前線に居る我々は、患者の医療情報を的確に収集し、それを処理し、必要ならば最適な情報を患者と共に後方病院に紹介しなければならない。また目の前の患者のためには必要な情報も集めなければならない。これは「前線には、必要な物資、情報を必要な場所に、必要な料を必要なタイミングで送る」兵站(ロジステックス、logistics)である。

これからますます病気が増えてくる時代には、以前にもまして現場だけの治療、対応では乗り切れない。それには「兵站」を尊重する思想が必要である、先の大戦での日本敗戦原因の一つにはこの思想の軽視があったと考えられている。また重視しようにも輸送困難、貧困のため、軽視せざるをえなくなったとの説がある。しかし現代はITの発展により現場の厖大なデータを「ビッグデータ」として生かすことが可能だ。現場に必要なものは何か、判断できるようになってきている。とにかく必要な判断ができるように的確な診察、正確な記述をして、多病高齢化時代に必要な整備、備品、資金を世に問わなければならない。そんな時代がすでに到来していると考え、実践をしている。