日州医事 第841号
「かかりつけ医」に情報の集約化を!!
「かかりつけ医」に情報の集約化を!!
日南市 きよひで内科クリニック 河野清秀
ある日のこと、「先生,この薬(ステロイド)はもう出されていませんよ」多病高齢者の病態説明時に付き添いの娘さんに言われた。長年、当院を「かかりつけ医」としていた患者さんだった。彼女は徐々に多病となり、ある病気で県病院より大学病院に紹介され、手術後、大学で治療されていた。その後、改善しステロイド剤は飲まなくてよくなっていた。午前中の忙しい時間に、薬の確認に10分以上を費やした。大学受診は、当院からの直接紹介ではなく、県病院経由であったために当院に情報が届いていなかったのだ。
私は大学では血液専門医、日南市立病院では内科専門医、内科診療所を開業してからは総合診療医となり患者さんの病気に応じて領域を広げてきた。地域医療の第一線の診療所として全身CTを導入し検査技師を雇い、患者さんの病態把握に努めて来た。だからこそ、例えば警察からの突然死の問い合わせにも日頃の病態管理で「かかりつけ医」として「異常死」でないことを示すことができて来た。
また、各人の病態を医療秘書に伝え電子カルテに記載させ、他の医療関係者に理解しやすい内容としてきた。それ故に二次、三次病院への円滑な紹介が可能になっている。しかしながら二次病院から三次病院、専門病院に紹介されると返事が滞り病態把握が困難になることがある。特に高次病院での抗癌剤、ステロイド等の免疫抑制剤は病態に影響が出る。病態把握が複雑になり、「かかりつけ医」として感冒等の日常の病気でも対応に時間がかかることがしばしばある。
当院は昨年度、県立日南病院に218件の紹介状を書き、その他の病院を含めると約400件を紹介している。これらの返事の大半は郵便物なので時間差も出る。昨今、二次病院等の高次病院は全て電子カルテが導入されている。それであれば「公共クラウド」を利用し、医療機関間の伝達情報をこれに載せて情報の一元化はできないものか。患者さんが最初に受診する診療所の「かかりつけ医」は、時間差なし待ったなしの情報を必要としている。