日州医事 第738号
平成23年2月
少子高齢化社会には総合内科開業医が必要
日南市 きよひで内科クリニック 河野清秀
「埼玉の叔父が急に意識がおかしくなったので診てくれ」と昨年7月、兄からの電話があり、学会出張ついでに診察しました。叔父の診断は心不全、心房細動、糖尿病、多発性脳梗塞等でした。意識障害は低血糖に因るものでしたが、インスリン治療中にもかかわらず、自己血糖測定指導や食事指導はなく、また要介護状態にもかかわらず、介護保険の説明も受けていませんでした。心不全や心房細動はよく治療されていたので、叔父の話からするとかかりつけの病院の先生は心臓病の専門医で、その他は手が回らない感じでした。叔父や親類縁者は「付近の病院の先生は各疾患の専門医ではあるが、先生はとても忙しく、各疾患を説明する充分な時間がない。多病のある高齢者は不安である。診療所に頼るにも設備のある診療所はあまり無い」とのことでした。埼玉南部は70年代以降に急激な人口増加で、地価高騰しました。そのため設備の要る内科総合医は開業困難と考えました。現在でも地価は坪100万ほどです。この高地価で、しかも以前より相対的に低下している現在の保険診療単価では、内科総合医の個人開業は、日南では可能でも埼玉南部では困難です。近年の統計で埼玉は人口当たりの医師数は全国最低なのも肯けます。
世界的に評判のよい日本の医療システムを支えてきたのは、ある程度何でも診断や治療のできる、内科を中心とした開業総合医だと考えています。しかし内科総合医が開業困難ではこれから、多病、高齢化していく患者さんや地域、まして開業を考えている先生にとっても不幸です。これの解決には、坪当たり収益率を良くすることで可能となります。365日、朝7時より夜8時まで診療して、患者さんの利便性をよくさえすれば、患者さんの多い都会では医師の知名度ではなくても、システムで多人数の来院が望めます。これを医師3〜4人で、担当医時間交代制で診療すれば医師は負担なく診られます。更に効率よくするために、電子カルテ等のITや医療秘書を徹底利用すれば、埼玉南部のような地価高騰地でも総合内科診療所開設は可能です。日本各地の開業困難な地に内科開業医という、ある程度、何でも診断、治療できる総合医を作り、これからの更なる高齢化社会に備えることが必要です。