第792号

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日州医事 第792号
平成27年8月

「総合診療専門医には担当医交代制が必要」これを育成するのは地域の診療所である。

日南市 きよひで内科クリニック 河野清秀

 総合診療専門医(総合医)が確立されるとのこと。人々の望みは入院や在宅医療ではなく、日常生活が可能な健康寿命の増進の医療である。これに応えられるのは総合医であり、その活躍する場所は地域の診療所であろう。実施されるマイナンバー制度で生涯電子健康記録が可能だ。これにより総合医診療所、総合医の健康寿命への貢献度はbig dataの解析により、客観的に高い評価を得るだろう。
 日本専門医機構の今年4月の総合医委員会案によると、総合医は地域の継続的医療を求められている。これは「24時間働け」を意味し、これを医師に強要される可能性がある。これでは総合医への選択は敬遠されがちになる。フランスでも総合医の人気は低い。またアメリカの総合医の「24時間対応のmedical home構想」は医師の負担大との批判がある。総合医のためのwork and life balanceの充実が必要である。これには総合医診療所は担当医交代制が必須である。担当医交代制には、引き継ぐ先生への解りやすいカルテ、医療秘書の電子カルテ記

録、病院との連携等、情報通信技術(ICT)の積極的活用が必要だ。大学や病院の医師は、主治医制であるために解りやすいカルテを書く事や他の職種との連携を取る事に慣れていない。専門医の集合体である大学や病院は疾患の深度を高める事は可能であるが、総合医の専門である幅広い症状を時間継続的に診る事は不可能である。これらは逆に地域の診療所が得意分野である。総合医は地域の診療所で育てるのが最適と思われる。総合医の育成は大学や病院では不可能と考えて、当院では以前より積極的に宮大の5、6年生の教育実習生、研修医を受け入れている。最近は総合医を目指す人たちも増えている。今年度より医師二人で担当医交代制を実施、診療所での担当医交代制のノウハウを集めている。これからの多病高齢者社会に「日本の誇れる国民皆保険制度が試される、大都市でも開設可能な担当医交代制」の総合医診療所のモデルを彼らに見せていきたい。