第621号

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日州医事 第621号
血液疾患治療者は開業に不向きか?

日南市 きよひで内科クリニック 河野清秀

 開業して3年になる。今でも大学の研究室の会合に呼ばれると出来るだけ出席して若い人と話をしている。血液学研究と関わりの深い万能細胞療法、臓器移植、クローン人間、遺伝子治療、新興感染症、国の研究体制の問題等、話は刺激的で夢多く、つい時間を忘れ夜遅くなってしまう。ところが最近、何回か会合に出たが、顔ぶれが一緒で新人がいないことに気が付いた。後輩に聞いてみると、最近はこの分野は若い人に人気がないとのこと。それは、重症な患者が多く、きつい、開業して役立たない等の理由であった。修行時代はきついのはあたりまえだから論外として、開業して役立たない論は間違い。たしかに、実際開業して、5千人弱を診て緊急な判断が要った血液疾患はわずか5人ほどであった。

 しかし血液疾患診療で培われた、頭から足先まで診察する態度、熱発患者にすぐ血液塗抹標本で確かめる態度、悪性疾患にたじろがない態度は開業医にも必要なことだ。また市井の医者としても上記の問題を尋ねられることがありこれも科学の基礎として血液学に実際携わったおかげで何とか答えられた。医学の進歩は日進月歩で習った技術はすぐ古くなるが、血液疾患は現代の主要な学問の分子遺伝学、免疫学、腫瘍学等の表現疾患で、これを学んだおかげで現代医学についていきやすい。
 「ぜひ多くの若い人に血液疾患の研究、治療に少しでも関わるように」指導するようにと後輩をはげましている今日この頃である。